冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
よくも悪くも、わかりやすく率直なアメリカの文化に晴臣はすっかり染まっていたが、日本にはあえて言葉にしないのが礼儀という考え方もあるのだった。そもそも、縁談の断り方にはややこしいルールが存在していたような気もする。蝶子がこの場でノーを突きつけるわけにはいかないのだろう。
気まずい空気が流れたが、タイミングのいいことにちょうど強肴の皿が運ばれてきた。
「うまそうだ。どうぞ、冷めないうちに」
晴臣が視線で蝶子を促すと、彼女はすっと品よく箸を伸ばした。
自然に話題を変えることができたのはありがたいが、晴臣の心は自分でも驚くほどに沈んでいた。蝶子が婚約を受け入れてくれることを、どこかで期待していたのかもしれない。
(こちらから言うべきか、婚約の話はなかったことにして構わないのだと)
たしか縁談は女性から断るのがマナーだったはずだが、彼女の性格を考えると晴臣のほうからそれとなくサインを出すべきだろう。彼女はきっと『断る』という行為が苦手なはずだ。たとえ、どんなに不本意だったとしても。
気まずい空気が流れたが、タイミングのいいことにちょうど強肴の皿が運ばれてきた。
「うまそうだ。どうぞ、冷めないうちに」
晴臣が視線で蝶子を促すと、彼女はすっと品よく箸を伸ばした。
自然に話題を変えることができたのはありがたいが、晴臣の心は自分でも驚くほどに沈んでいた。蝶子が婚約を受け入れてくれることを、どこかで期待していたのかもしれない。
(こちらから言うべきか、婚約の話はなかったことにして構わないのだと)
たしか縁談は女性から断るのがマナーだったはずだが、彼女の性格を考えると晴臣のほうからそれとなくサインを出すべきだろう。彼女はきっと『断る』という行為が苦手なはずだ。たとえ、どんなに不本意だったとしても。