冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
 そんなことを考えてはいたが言葉にできないまま食事を終え、晴臣と蝶子は店を出た。彼女のために呼んだタクシーを待つ間に晴臣が発した言葉は自分でも予想外のものだった。

「また……誘っても構わないか? 俺たちはもう少し、互いを知る必要があると思う」

 蝶子は目を丸くして晴臣を見返すと、ゆっくりと首を縦に振る。

「……はい」

 蝶子の乗ったタクシーが遠ざかっていくのを晴臣はじっと見送る。ほぼ初対面同然なので、タクシーに同乗するのはやめておいた。

「なにを言ってるんだ、俺は」

 顔をしかめて、思わずひとりごちる。彼女が断りやすい雰囲気を作ってやるべきだと考えていたのに、真逆の発言をしてしまった。思考と行動がバラバラになってしまうなど、晴臣には初めての経験だった。

(俺たち……じゃない。ただ、俺が彼女をもっと知りたいと思ったんだ)

 ***

 
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