冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
 あまりの愛らしさに晴臣はこの場で彼女を押し倒してしまおうかと思ったが、なんとかその衝動を押しとどめた。蝶子は顔を見られればそれで満足なようだが、晴臣のほうはそうはいかない。顔を見ればキスをしたくなるし、声を聞けば抱き締めてその先まで奪いたくなる。蝶子が起きて待ってくれていることは、晴臣にとってうれしさ半分苦しみ半分といったところだった。
 晴臣は自身の欲望から目を背けるために、話題を変えた。

「そういえば、来週末は珍しく連休なんだ。君の予定が大丈夫ならどこかへ出かけないか」

 少し嘘をついた。偶然連休になったかのように装ったが、本当は頼み込んで連休にしてもらったのだ。本当はわざわざ出かけなくても構わない。場所なんてどこだって、蝶子とふたりきりでゆっくり過ごすことだけが晴臣の望みだ。
 蝶子は心の底からうれしそうに頬を緩ませて答える。

「私はもちろん大丈夫です。晴臣さんと一緒なら、どこでもうれしいです!」

 ならば、移動の時間すら惜しいからこの部屋に閉じこもっていようか。ほんの一瞬、そんな妄想にかられたが、晴臣は軽く頭を振ってそれを追い払う。

「近場の温泉か、君はまだ若いから遊園地とかのほうがいいか?」

 六歳の年の差は晴臣からすれば大差ないように感じるが、彼女からすればきっと大きいはずだ。だが、蝶子が選んだのは温泉のほうだった。
< 83 / 188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop