冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
「賑やかな場所はあまり得意ではないので」

 彼女はなぜか恥じるような表情でそんなふうに言った。たしかに、彼女の好む店や場所は静かなところばかりだ。ただの好みかと思っていたが、違うのだろうか。彼女の態度に少し妙なものを感じはしたが、晴臣はなにも言わずにうなずいた。

「では、よさそうな宿を予約しておく」
「ありがとうございます。ふふ、楽しみ」

 ひとり言のようにつぶやいて、彼女は笑みをこぼす。

 自分は彼女のことをなにも知らないのだなと、晴臣はあらためて思った。あの家でどんなふうに過ごし、どう育ってきたのか。これだけの美貌と知性を併せ持ちながら、なぜいつも自信なさげに小さくなっているのか。
 婚約者という立場でありながら、彼女の存在を軽んじてきた過去の自分を歯がゆく思う。

(今からでも間に合うだろうか、どうしても彼女の心を振り向かせたい)
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