キミに溺れる。〜ピンク髪の先輩と派手色な恋を〜
名前も知らない彼にまた会いたくて、あれから──初めて話した日から毎日非常階段に来ている。
だけど、あの日以来、会っていない。
あまり3階に近寄れないので、校内ですれ違う時に人の声をよく聞くようにしている。けど、それらしき人は見つからない。
私はあの時間が楽しかったけど、彼にとってはただの暇潰しだったのかな。
……そう思うと、寂しい。
「サリーちゃん?」
階段の人のことを考えながら手すりに寄りかかった時だった──その声が聞こえたのは。
「え!?」
下から聞こえた声は、会いたいと思っていた彼のものだった。
「俺のこと見つけられた?」
「見つけられないです……」
嬉しくて答える声が震える。
さっき嫌な思いをしたばかりだから、彼の声が余計に心に響く。