ちょうどいいので結婚します
「ねえ、良一。友達でいい人探しといてよ。私も彼に聞いてみるから」
「もう、さゆったら、いいって言ってるでしょ?」
「……彼、ってお前彼氏いたのか」
「うん。いるよ、今日もこの後会う予定。えへへ、迎えに来てくれることになってるんだ。あ、ごめん、千幸」

 幸せいっぱいの咲由美は正反対の場所にいるような千幸に気付き、慌てて口を抑えた。千幸は咲由美に恋人がいることは以前に聞いていた。

「いいよ、気を遣わないで。羨ましいなあ。私も彼に迎えに来てもらいたい。そういうの、憧れる」

 千幸は言ってしまってからしまったと思った。結婚する気がないと言いながら、恋人のお迎えが羨ましいだなんて言ってしまったのだから。

 途端に、また二人から同情の目を向けられることになった。

「もう、良一が送ってやってよ」
「はあ、まあそうするけどな」
「何とかならないの、良一!」
「あー、だから探すって」
「じゃなくて、良一がちーと結婚したら?」

「「やだよ」」
 良一と千幸の声が間髪入れずに拒否する声が重なった。

「ごめん」
 咲由美も一瞬で失言だったと理解した。
「お前、兄と親友がイチャイチャしてんの見たいか?」
「良ちゃん、例えでもイチャイチャさせないで」
 千幸の言い方に良一は多少気分を害したようだが、反論はしなかった。

「私もヤだな、確かに」
 言い出した咲由美もうげぇと何かを吐き出す真似をした。
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