ちょうどいいので結婚します
「な、何やってんの、アンタ! 何で婚約者の電話番号も知らないのよ!!」
「や、俺たち内勤だし。俺はともかくちゅきちゃんは仕事中にスマホなんて出す子じゃないし、昼休みも出したりしないしさ。食事に誘った時に聞こうと思って……あ、俺たちって今、婚約中ってことになんの、マジか!!」

 功至は話しながらテンションが二転三転した。
「ほんと、呆れるわね」
「だから、明日全部聞くよ。それと、ちゃんとずっと好きだったって伝えるつもり」

 功至がそう言うと、多華子はふっと顔を和らげた。

「良かったわね。おめでとう」
「いや、ありがとう」
「じゃあ、そろそろ独立に向けて動くのね」
「そうだな。ここからは勿論、婚約者に相談しながらね。彼女、連れていくつもりだから」
「ははーん。公私ともにね」
「そう、功至とともに」
 とつまらないことを言ってしまうくらい浮かれだした。
「……はあ、あほらし。ずっと心配してたのに、結局丸く収まるのね」
「俺より愛してる男はいないからね。愛の勝利」
「ほんっと、アンタは片思いじゃなくて良かったわ。怖いもん」
「自分でもそう思う。怖いくらい好き」
「はいはい、ご馳走様でした」
「いやいや。いつも話聞いてくれてありがとう。これからはもっと惚気ることにする」
「うわ、うっざ」

 多華子はそう言いながらも笑ったが、もうすぐ自分もお役ごめんなのだとこの時間を楽しんでいた。
「きっとアンタのことだからすごく大切にするんでしょ。なんか想像出来たわ」

 功至はそう言われて相好を崩した。
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