ちょうどいいので結婚します
この日に終わらせておかなけらばいけない最低限の仕事が終わると、千幸は二回目の“廊下は走らない”という決まりを破っていた。
向かった先は社長室だった。わざわざ、父親にアポイントを取っていた。10分で良いからと取り付けた。
「お父さん! 結婚のことだけど!!」
愛一郎は娘の気が変わったのかと体を強ばらせたが、何てことないように装った。
「はは。どうしたんだ、早速功至君と喧嘩でもしたかな?」
千幸は、父親が親しみを込めて呼んだ功至の名前に、勢いを少し失速させた。
「え、まさか、喧嘩なんて出来な……しないけど、今日あんまり一柳さんとお話が出来ていなくて」
「まあそうだな。職場だし、お前たちの《《婚約》》の話はもう少し話が進んでからの方がいいだろう?」
「婚約!」
「……どうしたんだ?」
「いいえ。少し確認したかっただけ」
父親の口から婚約という言葉が出て来て、千幸はこの話がちゃんとしたものであると噛み締めた。婚約、そうか、私たちは婚約したことになるのだわ。
「確認? 何のだ?」
「あの、本当に功至さんはこの結婚に乗り気なの?」
「ああ、勿論。一柳家も願ってもない縁談だと喜んでいたよ。それは小宮山もだろう?」
「ええ。私もです。お父さん」
「うん。お前たちは見知らぬ関係ではないし、あまり親が介入するのもなと向こうのご両親も言ってらっしゃる。後は功至くんと相談して今後の事は決めなさい」
「はい。ありがとうお父さん」
千幸は安心して部屋を出た。そうだわ、職場だもの。正式に発表するまで私たちの関係は口外しない方がいい。流石だわ、一柳さん。いいえ、これからは功至さんって言ったらいいのかしら。千幸は千幸なりに浮かれていた。
社長室からは安堵の大きなため息が聞こえた。
向かった先は社長室だった。わざわざ、父親にアポイントを取っていた。10分で良いからと取り付けた。
「お父さん! 結婚のことだけど!!」
愛一郎は娘の気が変わったのかと体を強ばらせたが、何てことないように装った。
「はは。どうしたんだ、早速功至君と喧嘩でもしたかな?」
千幸は、父親が親しみを込めて呼んだ功至の名前に、勢いを少し失速させた。
「え、まさか、喧嘩なんて出来な……しないけど、今日あんまり一柳さんとお話が出来ていなくて」
「まあそうだな。職場だし、お前たちの《《婚約》》の話はもう少し話が進んでからの方がいいだろう?」
「婚約!」
「……どうしたんだ?」
「いいえ。少し確認したかっただけ」
父親の口から婚約という言葉が出て来て、千幸はこの話がちゃんとしたものであると噛み締めた。婚約、そうか、私たちは婚約したことになるのだわ。
「確認? 何のだ?」
「あの、本当に功至さんはこの結婚に乗り気なの?」
「ああ、勿論。一柳家も願ってもない縁談だと喜んでいたよ。それは小宮山もだろう?」
「ええ。私もです。お父さん」
「うん。お前たちは見知らぬ関係ではないし、あまり親が介入するのもなと向こうのご両親も言ってらっしゃる。後は功至くんと相談して今後の事は決めなさい」
「はい。ありがとうお父さん」
千幸は安心して部屋を出た。そうだわ、職場だもの。正式に発表するまで私たちの関係は口外しない方がいい。流石だわ、一柳さん。いいえ、これからは功至さんって言ったらいいのかしら。千幸は千幸なりに浮かれていた。
社長室からは安堵の大きなため息が聞こえた。