ちょうどいいので結婚します
　会社を出て千幸がスマホを確認すると、メッセージが一つ届いていた。良一からだった。

『千幸ちゃーん、俺に報告しなきゃならないことがあるんじゃないの？』

　この様子から良一にはもう話が伝わっているのだろう。千幸は知らず顔が緩み、すぐに良一へと電話をかけた。

　実際、千幸結婚の一報は直ぐに進藤家に母から母ルートで伝えられたのだった。

「良ちゃん、良ちゃん、話が早いのね、聞いて！ 私、もう信じられなくって！」

　良一は電話口を耳から遠ざけて苦笑いした。千幸のこんな弾んだ声は初めて聞いた。電話では足りないだろうと、直ぐに会うことになった。

　千幸がこんなに嬉しそうなのも、饒舌なのも初めて見る姿だった。良一はそれを嬉しそうに見ていた。

「いっやあ、良かったな。親父さんたちが知り合いで。俺さ、正直もうその男と結婚出来なきゃ、ちーはずーっと独身なんじゃないかって心配してたんだよ」
「私も。一柳……こ、功至さんとね結婚出来るなんてことは思ってなかったんだけど、独身でいるつもりだった。恋愛には向いてないし、結婚なんて夢のまた夢で」
「うん。ちーの一途な気持ちがどこかで伝わったんだろ」
　
　千幸は嬉しさ余ったのか大きな瞳を潤ませた。

「あはは、全く。良かった良かった」
　良一は優しい手つきで千幸の頭を撫でた。

「うん。ありがとう良ちゃん」
「まだ詳しい事は決まってないんだろう？ 向こうの、なんだっけ、功至クンは何て？ 」

　今の今までキラキラしていた千幸の目がキョロキョロとさ迷った。
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