天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!
 その時、不意に理解した。マナ治療着の開発前は王宮に戻りたいと言っていたディートハルトが、王都で別れる時寂しそうな顔をしていた理由が。
 ディートハルトは賢い子だ。ここに来るまでの間、周囲の人の様子からそれを悟っていたのだろう。

「だけど、僕はミリエラ嬢達のおかげで、マナが使えるようになった。訓練次第では、強力な魔術を使うこともできるようになるかもしれません」

 わずか七歳の少年の言葉に、室内はしんとしていた。皆、ディートハルトの言葉を一言一句聞き漏らさないようにしている。彼は、胸に手を当てた。

「もし、魔術を使えるようになれば、僕は後継者争いに復活することになるでしょう。ですが、僕はそれを望みません」

 そう宣言するディートハルトの表情を見ていると、ミリエラの胸を突きさすような痛みが襲い掛かった。

 彼はまだ子供。中身が成人女性のミリエラとは違い、本当の子供だ。それなのに、こんなにも他の人達のことを考え、最良の道を探そうとしている。

「そんな!」

 両手で口を覆い、立ち上がったのは王妃であった。彼女は首を激しく横に振っている。

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