天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!
 なんてことだろう。母の姿が見える。声を聞くことができる。

 会えないとわかっていたからこそ、母について問うのは避けてきた。

 ミリエラが知っているのは、ニコラとは子供の頃からの親友だったこと。父とも幼馴染だったこと。

 想い想われて侯爵家に嫁ぎ――そして、亡くなったということぐらい。

「君は、アウレリアを見たことがないだろう。このオルゴールは君にあげる。だから――」

 けれど、ミリエラはジェラルドの言葉を途中で遮った。

「パパも。パパも一緒にここに座って見ましょう……ね?」

 思いがけない言葉だったのか、ジェラルドは一瞬固まった。

 だが、こわごわとミリエラを抱き上げると、ひとつのソファをふたりで分け合うように腰を下ろす。

 音楽に重なるように流れてくる若い頃の両親の声。

 背中を預けた父の身体の温かさ。ミリエラの身体に回された腕に込められた力。

「……パパ? ママを、見ないの?」

 ふと気がつくと、ジェラルドの様子がおかしい。ミリエラは手を伸ばして、彼の頬に触れた。濡れている――もしや、これは。

「パパ、泣いてる」

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