あやかし戦記 見えない糸
「ありがとう!それじゃあ早速、護衛してほしい僕の部下を紹介するよ」

ヴィンセントの手をギルベルトは力強く握り、部下の名前を呼ぶ。イヅナたちの前に、小柄でメガネをかけた青いリボンのワンピースの女性が姿を見せた。

「アリス・スペンサーです。よろしくお願いします」

アリスがペコリと頭を下げ、「清楚系美人……」とレオナードが鼻の下を伸ばしながら呟く。そのだらしない顔にムッとし、イヅナはレオナードの足を思い切り踏み付けた。

「明日、隣国に向けて出発しようと思っています」

「わかりました。この屋敷の前で集合でいいですか?」

ヴィンセントはアリスと日程などの確認を行い、レオナードは踏まれた足を痛がり、ギルベルトとツヤは殴り合いを始めている。一言で言えば、この場はカオスな状態である。

(ヴィンセントが無事に帰ってきてくれるといいけど……)

彼のためにお守りを作ろうとイヅナは決め、殴り合うツヤに一言声をかけ、その場を離れる。東洋人である父から、東洋では旅に出る人に無事に帰ってこられるようにお守りを渡すと聞いたことがあるからだ。作り方ももちろん知っている。
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