あやかし戦記 見えない糸
「やめろよ、そこは俺の家だぞ!!」

変わり果てた村の姿に動けなくなっていたイヅナの耳に、泣き叫ぶ声が聞こえてくる。声のする方を見れば、フェイが呪いを巨人にかけていた。巨人が三体もフェイの二階建ての家に群がり、屋根や壁を壊している。

フェイは手から炎を出して巨人に当てているものの、巨人は体を痒そうにするだけで手を止めることはない。あっという間にフェイの家は瓦礫の山となっていく。

「ッ!」

フェイは泣きながら体を震わせ、そこへギルダが駆け付けて彼に声をかける。するとフェイはイヅナたちを睨み、勢いよく走ってくる。そして立ち尽くすイヅナの胸ぐらを掴み、激しく揺さぶった。

「お前ら、妖を倒す仕事してんだろ!?何で俺の家を守ってくれないんだよ!!あの家は、俺の家族との思い出がいっぱい詰まった家なんだぞ……。なのに!」

「えっ、ちょっと待って!やめて!」

イヅナはフェイの手を解こうとしたが、力で全く敵わない。恐怖で全てが染まってしまいそうになった時、「やめろ!」とレオナードとヴィンセントがフェイの腕を掴んで引き離した。
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