消えた未来
 そんな自分に嫌気がさす。

「……ごめんなさい」
「謝るくらいなら、勝手な妄想はもうやめろよ」

 久我君は鼻で笑う。

 耳が痛い。

 苦笑しながら、久我君の過去の言葉を思い出した。

『誰にでも、一つや二つ、他人には言えないことがあるだろ。それを無理矢理聞くのは、無神経な奴がすることだ』

 久我君は私の隠したことを聞いてこなかったのに、私は真逆のことをしているのだから、本当に心が痛かった。

 でも、勝手に妄想してしまうよりはいい。

 ……そうやって自分に言い聞かせて、私がしていることに対する罪悪感のようなものを減らしたいだけなのかもしれないけど。

「はやく教室に戻るよ」

 そう言って、久我君が先に戻るから、早足に追いかける。

「そういえば、織部さんはあそこでなにをしてたんだ? またストーカー?」

 久我君に言われて、久我君にお礼を言うために探していたのを思い出した。

「違う。久我君のおかげで家族の問題と向き合おうと思えたから、お礼を言いたくて」
「へえ」

 あまり信じていない声だ。

 でも、ここで久我君に迷惑しかかけていないのだから、無理もない。

「別に、ただ話聞いただけだし、お礼なんていいよ」
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