酔いしれる情緒
「凛。」
名前を呼ばれ、呆然としながらも
恐る恐ると視線を当てた。
車の中にいる彼は
外からじゃ表情があまり良く見えなかったけど
「巻き込んで、ごめん」
その言葉には
私との" 何か "を遠回しに言われた感じがして
その声には
寂しそうな響きが含まれている気がして───
「春っ、」
身を乗り出し、慌てるように彼の腕を掴んだ。
目が合えば、やっぱり思っていたとおりの目と表情を浮かべている。
瞳には色が無く、顔には笑顔がない。
目が合っているはずなのに
合っている気がしない。
彼の瞳に────私が映っている気がしない。
「なに?」
「なにって……」
どことなく冷たい口調。
背筋がゾッとするほどの嫌な予感。
私は腕を掴む手にギュッと力を込めた。
「────アンタともう会えない気がして」
素直にそう言えば、春は分かりやすくピクリと反応する。
けれど、少しして目元に笑みを浮かべる春。
「そんなことないよ」
……あ。嘘、だ。
私には分かってしまう。
その笑みは、偽りの笑みだと。