酔いしれる情緒



どこからか聞こえてくる携帯のブザー音。



それは春の携帯から。

相手はきっと由紀子さんだ。



催促するかのように
切れることなくずっと鳴り続けている。





もう、時間が、無い。





焦りと不安が入り交じって気持ち悪い。




未だにコイツの考えていることは分からないし、何がどうなってこうなったのかも、説明してくれないし。






春は、教えてくれない。


それは出会ってからずっと。





ずっと、春は、

『大切なこと』を教えてくれない。





隠す意味は何なのか。


何に迷い、苦しんでいるのか。




その人生に私を巻き込んだくせに


なんで、頼ってくれないのか。






「───言いたくないなら、もう、いい。」





そう呟いた矢先、ゆっくりと顔を上げた春と目が合った。




ゆらりと揺れる、その瞳。





「え……?」

「言わなくていいって、言ってんの」

「…怒ってる?」

「人生をめちゃくちゃにされて怒ってないと思う?」

「………………」





また、口を閉ざす、春。


その顔はどこか罰が悪そうに。



たぶん、だけど。自分がしたことは良くないことだって、ちゃんと分かっているような顔だった。





「聞いても答えてくれないし」

「………うん」

「欲望押し付けてくるし」

「………、…うん」

「強引だし執拗いし、たまにキモいし」

「キモい…」





キモい、は言いすぎたかもしれない。



けど。きっと間違ってもいない。



少しの間離ればなれになるから服を貸して欲しいって言ってくるところとか、知らぬ間にこの家の鍵を持っているところとか。説明がない分気持ち悪いし。




そんな感じで最低最悪な部分を兼ね揃えてて


自分勝手でなんの説明も無く私を突き放そうとするやつなのに。








「──────けど、心底好きなのよ。」








嫌いになれないとか、ほんと、馬鹿みたい。

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