酔いしれる情緒

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仕事終わり、駅前のコンビニでコーヒーを買った。


家に帰るはずだった身体が自然とコンビニに向かい、ぼーっとしながら手に取っていたのがコーヒーだった。



そしてまた、ぼーっとしながらソレを口に含んだ時、想像もしていなかった甘さが口の中に広がっては二回目を繰り返すことなく蓋をした。




(ラテ……最悪。間違えてるし)




『Black』を買ったつもりが、今手にしている物には『Latte』の文字。



色で大体分かるはずなのに、飲むまで気づかないくらい頭の動きが鈍っているらしい。


飲んで気づけただけ良かったと思っておこう。気づかずに飲み進めていたらそれはそれでヤバい。




行き場を無くしたこの飲み物の蓋を持ち、ゆらりゆらりと揺らしながら家へと向かう。



口の中が甘ったるくて仕方がないけど

買い直しに行く、という気分にはならなかった。




(これ……どうしよう。1回口付けちゃったし捨てるしかないよなぁ)




ああ、勿体無い。こんなことになるなら真っ直ぐ家に帰ればよかった。


そんなことを思うも、勝手にコンビニへと向かったこの身体が悪い。




『あの子の仕事ぶり見てみたくないですか?』




カバンの中にある例のチケット。


それは私と春の関係を良く思っていない人から貰った物。



だからこそ嘘だと思っているし、騙されているとも思ってる。



だけど橋本さんの言っていることが本当なら、このチケットに指定された場所に行けば春に会えるということ。



願い待つことしか出来ない。そう思っていたけど、何故か橋本さんは私に手を貸した。




関係を良く思っていないにも関わらず会わせる意図は?


どうするつもり?何がしたい?




今日一日中ずっと橋本さんの不可解な行動に頭を使い、疑っては考え、案の定パンクした。



だからこそ好きなブラックコーヒーを飲んでその苦さを身に感じ、頭の中のモヤモヤを一度それでリセットさせるつもりだったのかも。




間違って買った飲み物に視線を当てて心の底からため息をついた。



甘ったるい口内を早くどうにかしたい。
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