酔いしれる情緒


急ぎ足で家に向かい、階段を上った。



そして最後の1段を超えた先で肩にかけてあったトートバッグの取っ手がずり落ちる。





「……………なんで」





開いた口がなかなか閉じれず、唖然とする。




また……予期してなかったことが起きた。



瞳に飛び込んできた光景は、見慣れているように思えても、数日間会ってなかったから新鮮さも感じて。





「お疲れ~」

「っ、な、んで」





その言葉、二回目。


けど、驚きのあまりそれしか出ない。




トートバッグが肩からドサッと床に落ちた。中には財布と携帯、それからちょっとした物が入ってるポーチと例のチケット。


落として困る物は携帯くらい、だけど





「なんでって」





画面割れてないかなとか


そんな心配よりも





「来ちゃダメだった?」





今はもう、春のことしか頭にない。




呆然とその場に立ち尽くす私。


春は何も言わずに床に落ちたカバンから外に飛び出た物を拾い集める。



気づいて私もその場にしゃがむけど、春はそんな私の手に手を添えた。



ピタリ。動きは止まってしまう。





「怒ってる?」

「っ、…え?」

「1週間も放置しちゃったこと」

「……怒ってる」

「そうだよね、ごめん」





当然この場に春がいるのは驚いた。

しかも、家の前に。



春の言ってる通り1週間も放置され、連絡も何もなくやってきて、怒ってるのも本当。





「……………でも、」





だけど


それ以上に





「会えたのは、嬉しい」





春の姿を瞳に映せていることが


何より嬉しかった。

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