酔いしれる情緒



「まって」

「ん?」

「ちょっと、まって」

「うん」




なんだ?




まってと言われ、とりあえず待ってみる。


何の待ち時間なのか分からないまま、目の前で頭を抱える春に視線を当てた。





(……春が、いる)





瞳から入る情報と手から感じるぬくもり。


軽く手を動かしては指先を緩く絡めた。





そんな彼の近くには私の携帯が。





(ああ、良かった。画面割れてない──…)








「………まてって、言ったのに」



春の中で何かがプツンと切れてしまったのは、私の意識がそれに向いた瞬間のことだった。





「っ、え?」





上から重ねるように添えられていた手。



その手によって私の手は優しく包み込まれていたけれど、今じゃ壁に押し付けられている。




トンっと肩が軽くぶつかった先は階段の壁。




さっきまで頭を抱え


どこか唸っていたその顔は






「歯止めが効かなくなるから、今日はちゃんと我慢するつもりだった。

……けど」






どこか苦しそうであっても



とても艶やかで、扇情的で










「今のは完全に、凛が悪い。」

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