酔いしれる情緒



「それにしても最近寒いよね~」

「………………」

「毎朝布団から出れなくて困るよ」

「………………」

「てゆーか、その服装寒くない?」

「………………」

「………聞いてる?」

「………………」

「(無視…)」





後ろでずっと何か言ってる。



聞こえる距離にいるのに、今の私にはその内容が全く入ってこない。




混乱してる。




だって、


今まで連絡も何も無くて


返信すらもしてくれなかったくせに。




そんなの、もう…





「………関わりを無くしたかったんじゃなかったの」





思っていたことが口から出るとまた大きな風が吹いた。



ポスターの端がヒラヒラと揺れる。



そのポスターを抑えるのは私の手と彼の手。



彼の手は私の手よりも大きくて。重ねられるとその中にすっぽりと収まってしまうほど。



彼の熱が冷えた手を徐々に溶かしていった。





こんなこと……しないでほしい。




関わりを無くしたいならあのまま連絡拒否し続ければ良かったのに。



私の前に現れなきゃいいのに。


こうやって、触れなきゃいいのに。





「好きな人が他にいるならここにわざわざ来る必要ないでしょ。こうやって触れてくる理由も意味分かんないし………なんなの、ほんと。
あんたの考えてることが分からない…」





分からない。何もかもが。





こいつの考えてること



この状況



そしてこの手を振り払えない自分も─────────分からない。


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