酔いしれる情緒
「っ…、…仕事中だからさっさとどいて」
自分ではどうも振り払えそうにない。
だから、そうお願いした。
彼の手はあの頃と変わらずあたたかくて、そのぬくもりに触れると心がホッと安心してしまうから。
堕ちたくない。
これ以上は、もうダメ。
この人には既に違う想い人がいる。
流されちゃ、ダメなんだ。
「…………………」
重ねられていた手がゆっくりと離れていった。
冷気が手に触れてぬくもりがあった場所に少しずつ冷たさが戻ってく。
だけどこの感覚に気を止めず、仕事であるそれをガラス面に貼ってく。
ペタっ、ペタっ。と、端をテープで固定している間、私はずっとそこに集中した。
背後に未だ残る人の気配とドキドキと煩い鼓動も全部無視して。
ほら………やっぱり。
言い訳も何もない。
本当だったんだ。事実だった。
じゃあ何しにここへ?
(…………ああ、分かった)
私は自分の首後ろに手を回した。
白い息が、宙を舞う。