酔いしれる情緒
(取りに来たのか、これを。)
ずっと付けていた物。繋がっている証が欲しくてずっと付けていたやつ。
似合ってると、こいつが私に付けてくれた、
あのネックレス。
そうだよね。
もう私が持っていたところで意味が無いし。
後々返しに行こうと思っていたところだったからちょうど良かった。
悴む手でそのネックレスを外そうと試みる。
お願いだから、早く外れて。
胸がズキズキと痛む前に。
返したくないと、そう思ってしまう前に。
「返して欲しいなら早くそう言えばいいのに」
強がってその台詞を言った───時だった。
ふわり。
首元に柔らかい何かを巻かれると咄嗟のことにピタリと動きが止まる私。
まだ温いそれは
さっきまで誰かがこのマフラーを使っていたからで。
「ちょっ……ちょっと待って。」
「っ………」
「もしかして……何も聞いてないの?」
「は…?なにが…」
眉間に皺を寄せて振り返れば、その人は首を傾げてメガネの奥にある瞳を丸くさせている。
キュッと心臓が握り締められているかのように苦しくなった。
だって、久々に見たから。
画面越しでも無く、広告や雑誌の表紙でも無い。
「…橋本さんにお願いしてあったんだけど」
春………そう、春が。
彼のシルエットが
この目にハッキリと映せるくらい、
いつかぶりの春がそこにいるから。
────しかもその整った顔をさらけ出して。