酔いしれる情緒


「……別にいいでしょ。まずアンタの名刺じゃないんだし。怒る理由も──」


「違う。」


「は?」


「あの人の名刺を捨てようがどうしようが、そんなのどうだっていい。」


「じゃあなんで怒ってんのよ。それが理由で怒ってるんじゃないとしたら何?」





私も徐々に苛立ってくると眉根を寄せて春を睨んだ。



だけど私を見下ろす春の表情は、怒っているように見えてなんだか悲しげで。





「もうその世界と関わることないって、それ、どういう意味?」





春の顔がどこか切なげに歪んでいくのを目の当たりにする。




なんでそんな顔をするんだろう。



そう望んでいるのはアンタでしょ?





「…………………」





春のその問いかけに呆れて小さく溜め息を吐く。





「……その言葉通りだけど?

アンタ熱愛撮られたみたいだし。」





早く終わらせなきゃ。





「別に、私たち付き合ってるわけじゃないから」





ポスターを貼ることも、この関係も。





「離れていれば気持ちが変わってしまっても仕方がないと思う。」





未だ前に進めていないのは





「一般人と芸能人じゃ、

やっぱり釣り合わないんだよ」





私だけだ。


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