酔いしれる情緒



手首は捕まれ、近い距離で顔を覗き込まれているこの状況。



傍から見ればイチャイチャすんなよ働けとか思われてしまっても仕方がないような体勢だ。



そんな体勢を様子を見に来たらしい店主にガッツリ見られると、注意されるどころか「お取り込み中だった?」とか何とか言って店の中に戻ってしまった。




が。数秒も経たないうちにまたひょっこりと顔を覗かせる店主。




絶対何か勘違いされていると思う。





「彼氏、あの人に似てるね。

あの人、あの~……あ。一ノ瀬───」


「気のせいです。」





慌てて春の顔面にマフラーを押し付けた。



「息できない」って微かに聞こえてくるけど気にしてられない。





「てか彼氏じゃないんで。」


「あ、そうなの?」





「距離近いからそうかと思った」って、そう言う店主に再度首を振る。





傍から見ればそう見えるらしいけど、残念ながら、私達は名もない関係だ。





「私に何か用ですか?」


「そうそう、ポスター貼り終わったら品出し手伝ってもらえる?」


「分かりました」


「よろしくね~」





店主はもう一度春の姿を上から下まで見渡してから首を傾げ、中に戻って行った。




顔面はどうにか隠せたけどその一般人離れしたスタイルの良さだけは隠しきれていない。



なんで今日に限って色々とキメてあるんだろう。



顔面だって、髪型だって。アレンジを加えているのか一際オーラが漏れだしている。





仕事終わり?でもまだ午前中だし。


それにしては早い気がする。

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