酔いしれる情緒
と。
「凛、苦しい、」
「!!」
……忘れてた。
店主がいなくなってからもずっと顔面に押し付けていたマフラー。
声の感じからしてそろそろヤバいと感じた私は急いでマフラーを引き離す。
「…ごめん。でもアンタが悪い」
顔を隠さないから。
ケホッと一度咳払いをした春は
苦しさからか目を少し潤ませてこう言う。
「バレてもいいって言ってんじゃん」
「あのねぇ……」
ほんと……伝わらないな。
何度言わせれば気が済むのだろうか。
言葉にする度にイライラして仕方がないのに。
「私はアンタのためを思って言ってんの。
二股疑惑だとか、そう至らぬこと書かれてもいいわけ?嫌でしょ?じゃあ隠しなよ。」
「凛」
「ここには何しに来たわけ?このネックレスでも取りに?そうだとしたらお忙しい中わざわざ足を運んでご苦労さまね。」
「凛、」
「言われなくたって返すよちゃんと。箱と一緒にアンタの家のポストにでも入れておくから。早ければ今日、遅ければ明日。それとも今ここで返そうか?箱は家にあるけど取りに帰れる距離だし」
「凛!」
掴まれた腕。
だけど
「俺の話を聞いて」
「聞きたくない!」
私はその手を振り払った。
「もういい……もう疲れた。
これ以上私を振り回さないで」
まだポスターの貼り付けは途中のままで、
その続きをやれと言わんばかりに持っていたセロハンテープを春に投げつけ、私は言われた通り品出しへと向かう。
「凛、まっ……
………はぁ。もー…橋本さんめ……」
頭を抱えて春がそう呟いていたとも知らずに。