酔いしれる情緒
店内に戻ると、中は外と違って落ち着いた雰囲気が広がっていた。
だがムシャクシャした心はなかなか落ち着かず、私は何度か深呼吸を繰り返した。
その時入口付近の本を置くスペースが視界に入ってくると、未だ何も置かれていない状態にまたしても苛立ってしまう。
(慎二くん……ここお願いしてあったのに)
まず店内に慎二くんの姿がない。
ストック置き場か?
まあどうせ店主に何かお願いされたのだろう。
きっとそうだ。いや、絶対そう。
それしかない。
苛立ちを押し殺して、そのスペース前にしゃがむ。
箱から本を取り出そうとするけど、カッターが手元に無いことを思い出してはそんな小さなことでまたイラッときてしまった。
私、こんな短気だったっけ。
違うな、今はアイツのせいだ。
(……あーもうやめやめ。考えるの無し。)
とりあえずカッターを取りに行ってこのスペースに本を置く。そうだ。仕事に集中しろ。
カウンターに戻ってカッターを手に取ると、また同じ場所へと戻る。
大きなダンボールにカッターの刃を差し込み、端と端だけに切れ目を入れて蓋を開けた。
随分と重たかったそれはやっぱりダンボールいっぱいに本が詰め込まれていたからで。
「凛。」
フッ、と。
そのダンボールに影が映る。
それにより視界が暗く染まると中身が見えずらくなった。