酔いしれる情緒
シーンと静まり返るこの場所。
聞こえてくる音は店内に流れるBGMだけ。
しかも本屋には似合わない、
あのアップテンポな曲調のやつ。
もちろん今のこの雰囲気にも全く似合わない。
「人が来る前に早く行けば?」
そんな状況の中、
私はまた品出しの作業に戻ろうとした。
中身の見えないそれに手を突っ込み、取り出す。
厚さからしてそれが小説だと気づいた時には
「あーもう…分かった。」
目の前に私と同じ高さにしゃがんだ春がいて
「じゃあ単刀直入に言う」
真剣な眼差しで
「凛、」
無防備だった左手を取られると
「結婚しよう。」
色素の薄いその綺麗な瞳が、
もう見つめることのないと思っていたその瞳が
─────真っ直ぐ私を貫いたのだ。