海とメロンパンと恋
美しい友達



・・・え


今日も中庭でお弁当を食べているお兄ちゃんと私の前に


見知った顔が立った



「フフ、驚いた?」


「・・・お医者、さん?」


「・・・チッ」


驚いている私と舌打ちをして不機嫌さを出したお兄ちゃん


そんなお兄ちゃんのことなんてお構いなしに


杏子さんは「久しぶりね」と綺麗に笑った



・・・



お兄ちゃんが大学進学と同時に始めた一人暮らしの部屋に
数えきれないほど泊まった中で


買い物をしたいとお願いした時に
「同級生」と紹介されたのが杏子さんだった


最初はお兄ちゃんの恋人かもって期待したけれど

どうやらそれは違ったみたいで
いつもパンツスタイルとショートカットで颯爽と歩く杏子さんは


真似の出来ない私の憧れになっていった





「・・・え」


もう一度、驚いたのは首から下がる名札で


【木村杏子】


・・・木村院長の娘さん、とか


頭の中が混乱した私に


「胡桃ちゃん、それ多分、合ってる」


妄想癖まで熟知した杏子さんは
綺麗に片目を閉じた


「あ、あの・・・」


どうしようかと考える余裕もないまま
見上げた私を


「これまでと変わらずお友達でいてくれると嬉しいかも」


杏子さんはその脳内を完全に読み取った


「良いなぁ、お弁当」


「お前にはやらねぇ」


「ちょ、お兄ちゃん」


「良いのよ胡桃ちゃん。私と柚真はこれが通常」


「でも・・・」


「下手に優しくされると返って怖いわ」


「チッ、当たり前だ」


「お兄ちゃんっ!」


杏子さんが良いと言ったとしても
優しくないお兄ちゃんを肯定する訳にはいかない


睨んでみたって動じないお兄ちゃんにため息を吐いたところで


「胡桃ちゃん、今度の休みデートしない?」


「え、いいの?」


願ってもない杏子さんの提案に
お兄ちゃんに許可なんて貰うまえに


「是非、お願いしま〜す」


デートのお誘いを受けた














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