海とメロンパンと恋


「今日は鮭のホイル焼きとほうれん草のおひたし、肉じゃがとかき玉汁
キャベツとカブの香物ね」


やたら豆腐が多く入った冷蔵庫の所為で
今日は汁物に使うことにした


食材の切り方をざっと説明するだけで
誠司さんは飲み込みが良いのか
それ以降は質問無しで野菜が切られていく


料理をする間、カウンターに座って
私の料理レシピを書いている陽治さんに

時折質問されたりしながら


今日は四時半には仕上がっていた


「なぁ、クミちゃん」


「はい?」


「晩御飯此処で食っていかないか?」


突然のお誘いに・・・どう答えていいのか悩む


「えっと、あの、私、兄と一緒に住んでいて
兄と一緒に食べるから・・・ごめんなさい」


「あ、そうか、そうだよな
お兄さんがいるのか」


「はい」


「じゃあ、帰ってまた作るのか?」


「そうですよ」


「それって面倒じゃねぇ?」


「いや・・・そうでもない、かな」


確かに面倒だけれど兄を此処へは連れて来られないし

もしかしたら千代子さんのピンチヒッターも明日で終わるかもしれない


「おかず、プラ容器にでも詰めて帰れば?」


陽治さんも気の利く良い人だ


「ありがとうございます。
兄は和食を余り食べないので、お気持ちだけありがたくもらっておきますね」


借りを作りたく無い言い訳に
模範的な断りをして頭を下げる


「なんか悪いな」


「いえ、これは仕事なので」


「そりゃそうだけどよ」


「優しいですね、陽治さんは」


「・・・んな訳ねぇ」


プイと顔を背けた陽治さんの耳が赤いことにほっこりして


挨拶をすると二日目の仕事が終わった





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