初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
バレンタインが終わった二日後の日曜日。
「今日は練習に行かないのか?」
午後になっても出かける準備をしない私に、彼が尋ねてくる。
「一緒に過ごす時間が減っちゃうから、直君が出発するまで実家で練習するのはお休みする」
ソファに座る彼の肩に、甘えるように頭をのせる。
金曜日の夜はオーストリアへの異動を喜んでいたけれど、引継ぎの関係で三月中旬には彼ひとりで日本を発つという説明を聞いてから私の心は曇り模様。
このマンションにふたりで一緒に居られるのもあと一ケ月しかないと思うと、寂しくて仕方ないし、発表会で私の最後の演奏を見届けるという約束も果たされそうにない。しかし、彼は私の切ない胸の内を悟ってはくれなかった。
「週末は実家で練習するって決めたのは小夜子だろ?」
たしなめるように言われても、彼の言葉を素直に聞き入れられない。
彼にもたれかかっていた体を起こして頬を膨らませる。
「だって直君が発表会に来られないんじゃ、ヤル気が出ないもん」
「約束を守れなくなったのは悪いと思っている。でも、俺のために演奏するわけじゃないだろ?」