初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
「心配しないで、僕の音をよく聞いて」
気弱になっている私を励ましていた彼がスッと立ち上がり、背後に回り込む。そして、右斜めうしろから長い腕が静かに伸びてきて、ピアノに触れた指先がなめらかに動き出した。
「まあ、綺麗な音色」
「素敵ね」
華やかな明るい音が室内に鳴り響き、ざわついていた招待客からも感嘆の声があがる。
彼が奏でるメロディは、ひとつひとつの音がキラキラと輝いて聞こえるから不思議だ。
鍵盤の上を優雅にすべる指の動きに目を奪われていると、彼に顔を覗き込まれた。
「さあ、一緒に」
連弾は初めてだけど、直君がリードしてくれるから大丈夫。
彼の存在を心強く思いながらコクリとうなずき、ピアノを弾く。
私の未熟な演奏も彼が奏でる音に重なると、美しいハーモニーとなって耳に届くから心地いい。
もう、緊張も不安も感じないし、人の視線も気にならない。
ピアノを弾ける喜びに浸り、夢中でメロディを奏でる。しかし、楽しい時間ほどあっという間に終わる。
すべてのパートを弾き終えて鍵盤から手を離すと、室内が拍手に包まれた。