初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
淡々と話を進めていた彼がひと息つく。
まさかコンクールで優勝した翌朝に事故に遭っていたとは思ってもおらず、息を呑む。
まさに天国から地獄。一晩で運命が変わってしまった彼を思うと、胸に強い痛みが走った。
「気がついたときには病院のベッドの上だった。ごめんなさいと涙を流して何度も謝る彼女の泣き顔を見て後悔した。あまり酒が強くない美琴を朝まで付き合わせるべきじゃなかった、道路側を歩かせなければよかったとね」
彼の話はさらに続く。
「美琴は今も、あの事故は自分のせいだと思っている。でも、この先もずっと俺に負い目を感じたまま生きていくのはつらいだろ? だから、元気な姿を見せれば安心すると思って、ゴールデンウィークに小夜子を空港まで送った後に彼女に会いに行った。大学を辞めてから初めて会ったけれど、優しそうな旦那さんとかわいい子供に囲まれて幸せそうだったよ」
初めて聞く話に黙って耳を傾けていたのも束の間、思いがけない事実に驚き声をあげる。
「えっ? 美琴さんって結婚しているの?」
「ああ。現地の楽団員とな」
「麻里江さん、そんなことひと言も言ってなかった」
「そうなのか?」
「うん」
麻里江さんが美琴さんを既婚者だと伏せたのは、私をヤキモキさせて優越感に浸りたかったのだろう。