初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
彼は『在留邦人を相手に自宅で個人レッスンするのもいいかと考えている』と言ってくれた。
ピアニストを目指す子供にレッスンするのも気合いが入るし、お義母様のように趣味としてピアノを弾く人と一緒に演奏を楽しめたら幸せだ。
「現地の生活に早く慣れて、また講師ができるようにがんばるね」
まずはウィーンの街を地図なしで出歩けるようになりたいし、ドイツ語の勉強もしたいと思っている。
新たな目標を胸にヤル気をみなぎらせていると、彼が私の肩に手をのせて意味ありげに微笑む。
「その件だがすでにひとり、生徒が決まっている」
「えっ? 本当?」
「ああ」
きっと知り合いに声をかけてくれたのだろう。
すでに決まっているという生徒が誰なのか、わからないままでは落ち着かない。
「それは誰?」
「俺だ」
短く尋ねると、間を置かずに答えが返ってきた。
以前、結婚の挨拶をするためにマレーシアのご両親の自宅に伺ったとき、彼に一緒にピアノを弾こうと誘った。しかし、彼は首を縦には振らなかった。
再びピアノに向き合うと思ってくれたのはうれしいけれど、急な心の変化が知りたい。