初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~

出会ったときは七歳だった私も、もう二十七歳だ。

お酒はそれほど強くないけれど、夜公演の〝ソワレ〟を鑑賞しているのだから、ムーディーな雰囲気を楽しみたい。

「もちろん飲めます」

頬を膨らませて子供扱いされた不満をあらわにすると、彼が納得したようにうなずいた。

「それもそうか。買って来るからここで待っているように。いいね?」

「はい」

飲み物を手に持ち、歓談している人の間をすり抜けて行くうしろ姿を見つめる。

普段から体を鍛えているのだろう。真っ直ぐ伸びた背筋は凛々しいし、ダークグレーのスーツの上からでも胸板に厚みがあるのがわかる。

気が利くうえに見た目もカッコいい直君は、絶対モテる。今まで何人もの女性と付き合ってきたのだろうし、そもそも私より十も年上なんだから結婚していてもおかしくない。

特定の人がいるのかどうか気になるのは、直君が初恋の相手だから?

自分でもよくわからない感情に戸惑っていると、こちらに向かって歩いて来る彼の姿が見えた。

「待たせたな」

直君が結婚しているのか、この目で確認しようと心に決める。

別に悪いことをしているわけではないのに、ソワソワしてしまう自分にあきれ、グラスを差し出す彼の左手に視線を向けた。

その左薬指にマリッジリングはない。
< 19 / 184 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop