初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
「ずっと言おうと思っていたんだ。まさか叔父さんに先を越されるとはな。油断していた」
彼が体の前で両腕を組み、ため息をつく。
その残念がる様子を見ていたら『綺麗』という言葉は、お世辞じゃなくて本心ではないかと思えるから困る。
どういう返事をしていいのかわからず、慌てて視線を逸らしてうつむくと、エレベーターがポンと音を立てて七階に到着した。
これ以上、一緒に居るのは気まずくて仕方ない。
「今日はありがとう」
開いたドアから通路に出ると、早々に頭を下げる。しかし彼は、お礼の意図を汲み取ってはくれなかった。
「部屋の前まで送ると言っただろ? 何号室?」
「……七〇七号室」
「そうか」
渋々、部屋番号を口にした私の前で、彼が満足げにうなずいて歩き出す。
相変わらず強引でマイペースな彼を追い駆けて通路を進んでいると、すぐに七〇七号室の前に着いた。
今まで男性に送ってもらっても親と暮らしているため、家に上がるように勧めたことは一度もない。でもここは実家じゃないし、遠回りさせたのだから、ひと声かけた方がいいに決まっている。
「えっと……。コーヒーでも飲んで行く?」
たどたどしく誘ってみたものの、なんだか無性に照れくさい。
慣れないことはしない方がいいと後悔していると、彼が顔をしかめた。