初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
「頼むから、もっと危機感を持ってくれ」
「危機感?」
「夜遅くに男を部屋に招き入れる危険性を、よく考えろと言っている」
部屋の前で、彼が私を諭すように語る。
外国のホテルにひとりで泊まっている私に、なにか遭ったら大変だと心配してくれるのはありがたい。けれど、頭ごなしに注意されるのは気に入らない。
「私は直君を信頼しているから誘ったんだよ? 下心がありそうな人には絶対声をかけたりしません。だから安心して」
即座に反論した私を見て、彼が大きく目を見開く。
なにに衝撃を受けたのかわからずに首をかしげると、ついさっきまで不機嫌そうにしていた彼がクスクスと笑い出した。
「意外としっかりしているから驚いた。きつい言いかたをして悪かったな」
「ううん」
わだかまりが消えて、スッキリとした気持ちで微笑み合う。
「お誘いはうれしいけれど、今日は時間も遅いし遠慮しておく。明日は十時に迎えに来る。ブランチを食べながら、行き先を決めよう」
「うん。ありがとう」
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい」
挨拶を交わし、彼が背中を向けて歩き出す。
明日も直君に会えると思うと心が躍る。
今夜は気持ちが高ぶって、なかなか寝つけないかもしれない。
贅沢な悩みを胸に抱え、通路を進む彼のうしろ姿を見送った。