初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
席を立ち、頭の中で会話のシミュレーションをしていると、スマホがブルブルと震え出した。画面には『結城直斗』と、彼の名前が表示されている。
「な、直君からだっ! どうしよう」
今、まさに連絡しようと思っていた相手からの着信にうろたえ、助けを求めるように真紀を見つめる。
「どうしようじゃなくて、早く出なよ」
「う、うん。そうだね」
私にあきれた視線を向ける真紀にうなずき、小さく震える指で応答ボタンをタップした。
「もしもし、直君?」
『ああ。今、大丈夫か?』
「うん。大丈夫」
周りの人の迷惑にならないように、小声で話しながら店内から外に出る。
『元気だったか?』
「うん。ウィーンではお世話になりました」
『いや、俺も楽しかった。ありがとう』
久しぶりに聞く彼の声は、懐かしくもあり、新鮮にも聞こえるから不思議だ。
『それで一緒に食事に行けたらと思って連絡したんだが、来週の土曜日の夜はどうかな?』
「はい。大丈夫です!」
別れ際に交わした約束を忘れずにいてくれたことをうれしく思い、心を弾ませて返事をする。
『そうか。それなら七時に、銀座の時計台があるデパートの前で待ち合わせよう』
「うん、わかった」
夜の七時なら仕事が終わってからでも間に合うし、待ち合わせ場所もわかりやすくて安心できる。