初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
結局、直君にお見合いの相談をするか決められないまま一週間が経ち、迎えた約束の土曜日。
仕事を終えて待ち合わせ場所の時計台がある老舗デパートの前に行くと、私に気づいた彼が自分の居場所を知らせるように軽く手を上げた。
「遅くなってごめんなさい」
「いや、まだ七時になっていない。俺が早く来すぎただけだ。ほら」
頭を下げる私の目の前に、彼の腕がスッと伸びてくる。その左手首につけられている高級そうな腕時計の針は、たしかに午後六時五十分を指している。
「本当だ」
遅刻してはいけないと思い、電車から降りると脇目も振らずにここまで来た。
待たせずに済んだのはよかったけれど、約束の時間までまだ余裕があったのなら、トイレに寄って身だしなみのチェックをすればよかった。
小走りしたせいで前髪が乱れているのではないかと気になり、手ぐしで整える。
「寿司は好きか?」
「えっ? お寿司?」
「ああ」
「うん。好きだよ」
急に振られた話題に戸惑って返事をすると、彼がニコリと微笑んだ。
不意打ちの笑顔がまぶしくて、心臓が大きな音を立てる。
「そうか、それはよかった。おいしい寿司屋を知っているんだ。これからそこに行こう」
「うん」
コクリとうなずく私の腰に、大きな手がそっと添えられる。
銀座に詳しそうな彼のさりげないエスコートを心強く思い、歩を進めた。