初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~

私の返事を聞いた彼が慣れた様子でオーダーを済ませると、不意に目が合った。

「よく似合っているな」

「えっ?」

彼がなにを褒めてくれたのかわからず、首をかしげる。

「今日の髪型によく似合っている」

二度目の褒め言葉を聞き、その意味をようやく理解した。

今日は髪を緩く編み上げ、ウィーンでプレゼントされたブルーのクリスタルが散りばめられたバレッタで留めている。彼はそれを似合っていると褒めてくれたのだ。

「あ、ありがとう」

隣り合わせという近い距離でささやかれた、甘い言葉が恥ずかしい。

瞬く間に頬が熱くなるのを実感していると、カウンターの上に透明な液体が注がれたグラスと小鉢に入ったおつまみがコトンと置かれた。

「冷酒だ。少しは飲めるだろ? 乾杯しよう」

「うん」

グラスを合わせてお酒に口をつける。

独特な匂いが苦手で、日本酒はあまり飲まない。けれど、火照りを感じている今の私には、冷酒のキリッとした口あたりが快い。

「仕事は忙しいのか?」

「ううん。今はそうでもない。でも、発表会の準備が始まると忙しくなるかな」

「そうか」

照れを隠すようにお酒を飲んで雑談を交わす。

オリハラ音楽教室では年度末の三月に、コンサートホールを貸し切って発表会を行う。

半年前の九月には出演者と演奏曲を決めて、発表会に向けたレッスンをスタートさせなければならない。
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