初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
やっぱり、今の関係が壊れてしまうのは絶対に嫌。
フレンドリーに接してくれる彼の笑顔を見て、告白はしないと決意したとき、板前さんの腕が目の前にスッと伸びてきて、お皿の上に握り寿司が置かれた。
「お待たせしました。鯛です」
ほんのりとピンク色をした鯛の握りは見た目も綺麗で、とてもおいしそうだ。
「いただこうか」
「うん」
上品なお寿司を頬張ると、鯛の甘みが口いっぱいに広がる。
ふたりでおいしい物を食べるひとときは幸せで心が満たされる。けれど、呑気にお寿司を味わっている場合じゃない。
鯛の握りを食べ終え、覚悟を決めて口を開いた。
「直君、あのね……」
「ん?」
親にお見合いを勧められていると相談しようとしたものの、緊張しているのか思うように言葉が出ない。
「どうした?」
「ううん、なんでもない」
心配げなまなざしを私に向ける彼の前で、首を左右に振る。
焦らなくても時間はまだある。話は食事が終わった後にしよう。
そう決めると、絶妙なタイミングで出てくるお寿司を堪能することに集中した。