初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~

特別な日にはオシャレしたいと思うのが女心というものだ。

あらかじめ用意してきた裾がふわりと広がった、淡いブルーのワンピースドレスに袖を通し、肩の下まで伸びたストレートの黒髪をハーフアップにしてバレッタで留める。

「うん。こんな感じかな」

ひとり言をつぶやき、鏡に映った自分の姿をチェックしてうなずく。

仮眠を取ってからシャワーを浴びて、ホテルのレストランで早めの夕食を済ませた。

一時間ほど眠ったおかげで身も心も軽いし、お腹も満たされて気分は上々だ。

「忘れ物はないよね」

クラッチバッグを開けてコンサートのチケットが入っているのを確認すると、ホテルを後にする。

今の時刻は午後七時三十分。オーストリアは治安がいいとはいえ、女性が夜ひとりで出歩くのは避けるべきだというのは知っている。でも、目的地は目と鼻の先だ。

ライトアップされたウィーンの美しい街並みを楽しむ間もなく、コンサートホールに到着した。

係員にチケットを渡して建物の中に入ると、人の流れに沿って重厚感のあるエントランスロビーを進む。そして、チケットのナンバーを頼りに階段を上がり、ホールに足を踏み入れた。
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