初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
「うわぁ、素敵」
金箔を使用した黄金色に輝く室内を見回し、感嘆の声をあげる。
シューボックス型と呼ばれる四角い箱型のホールは、元日に生中継されるニューイヤーコンサートの会場としても有名だ。
世界で活躍している結城のおじさまの演奏を、こんな素晴らしい場所で聞けるなんて夢みたい。
期待に胸を膨らませて、バルコニー席の中央右寄りの最前列に腰を下ろす。
柱の彫刻は繊細だし、天井に描かれたフラスコ画はとても美しい。
このコンサートホールを訪れた目的も忘れ、恍惚とした気分で豪華絢爛な内装を眺めた。しかし思いがけない言葉が耳に届き、我に返る。
「小夜子ちゃん?」
「えっ?」
不意に聞こえてきた母国語に驚いて勢いよく顔を上げると、愕然とした面持ちで私に視線を向ける男性の姿があった。
知的でクールな印象を受ける切れ長の目もと、スッと通った鼻筋は高く、輪郭はシャープで癖のない黒髪は短く清潔感がある。
俳優かモデルのようにカッコいい人だな。
端整な顔立ちに思わず見惚れそうになったとき、ある過去の出来事が頭にパッと浮かんだ。しかし、その記憶はあまりにもおぼろげで自信が持てない。