初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
一番つらい思いをしたのは直君なのに、幼い私の気持ちに応えられなかったと自分を責めるのはやめてほしい。
「謝ら……ないで……」
涙ながらに訴えると、逞しい腕が背中に回って力がこもった。
肩を震わせて涙を流す私の頭を、彼が優しくなでてくれる。
心に傷を負った彼を慰めなければならないのは私の方なのに、心地いい温もりを自ら手放すことができない。
甘えるように温かい胸に頬を寄せて瞼を閉じると、平静さを失っていた気持ちが徐々に落ち着きを取り戻した。
「ありがとう。もう大丈夫」
「そうか」
私を抱き寄せていた腕を離した彼が、頬に伝い残る涙を指先でそっと拭ってくれる。
「小さな頃からピアニストになることだけを夢見てきたから、ピアノが弾けないとわかったときは目の前が真っ暗になった。それからは学校を辞めて部屋に引きこもって酒ばかり飲んだ。そんな自暴自棄な俺を見兼ねて、叔父さんが外交官になるのを勧めてくれたんだ」
夢を失い、ひとりで悲しみに耐えていた話を聞くのはつらい。けれど、結城のおじさまが孤独な彼に手を差し伸べたと知り、心が少し軽くなる。
「そうだったんだ」