初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~

「……もしかして直君?」

「ああ」

半信半疑で尋ねると彼がうなずき、右隣りの席に座って長い脚を組む。

「久しぶりだな。元気だったか?」

「うん。直君も元気そう」

「おかげさまで」

思いがけない再会に心を弾ませ、短い会話を交わした。

彼は(ゆう)()(なお)()、三十七歳。結城のおじさまの甥っ子で、顔を合わせるのは実に二十年振りだ。

私の記憶の中の彼は、笑い顔にあどけなさが残る学生のままで止まっている。だから、落ち着いた大人の雰囲気を醸し出す男性が直君だと、すぐには気づかなかった。

日本から遠く離れた異国の地でバッタリ出くわすなんてすごい偶然と思ったけれど、すぐにそうではないと気づく。

「直君も、おじさまに招待されたの?」

「ああ、そうだ。もう演奏が始まるな。話は後でしよう」

「うん」

クラシックコンサートで音を立てるのはマナー違反。慌てて口を閉じて姿勢を正す。でも、開演を知らせるブザーがホールに鳴り響いても、ちっとも落ち着かない。

過去に一度しか会ったことがないのに気になってしまうのは、彼が初恋相手だからだ。

舞台の袖からオーケストラのメンバーが姿を現す様子をぼんやりと見つめながら、私たちが出会った懐かしい記憶をたどった。
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