HONEY BUNNY P!NK♡⦅前編⦆
あれ、どうしよう。急に不安になってきた。不安というかゾワゾワする。七生がなにを考えているのか全くわからない。え、こわ。


「とりあえず、飯、食っとかないとな」


あんなに騒がしかったのに。めぐるは佐山さん達と消え、七生は俺のスマホと共に消えた。なんとなく、憐れみを含んだ目があちらこちらから飛んで来ている気がする。別に同情をして欲しいわけではないけど、遠巻きに見てくるぐらいなら、いっそ話し掛けてきてくれたらいいのに。すっかり慣れてしまった。慣らされてしまった。


静かに食べたいだなんて、言ったけれど。


『モモちゃん!なにこれ天才的に美味しい!』
『ん~!あっつあつ!ほっくほく!幸せすぎる~!』
『このソースうっまあ!オリジナルとか神じゃん?!』
『くあ~!疲れたカラダに沁みるぅ~!』


大きな口を開けて、表情豊かに、本当に幸せそうに、美味しそうに食べる人が近くにいるから。物足りなくて、味気なくて、少し、寂しい。ああ、抜け出せるのだろうか。戻れるだろうか。冷たくて、音と(いろ)のないあの頃(・・・)の食卓に。いつの日か、独りになる自分へ。
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