宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
担当医との話し合いを終えたら、病室に母の兄、島谷の伯父が来てくれていた。
「一花、歩。遅くなってすまない。こんな日に限って出張で北陸にいたんだよ。」
造り酒屋の伯父は商談に行っていたのだろう。
大阪からの最終新幹線で駆けつけてくれた様だ。
「伯父さん、遅くにわざわざすみません。」
「お前にも苦労をかけるね。映子がまさかこんな病気になるなんて…。」
「でも、一番つらいのはお母さんだから。」
「先週、施設で会ったんだが、前より認知症が進んでるから心配していたんだ。」
「そうでしたか。」
「その時に気付いてやれなくて…すまなかった。」
「伯父さんのせいじゃあありません。」
「あの時もなあ…。
一花や歩が大学に行っている時に大田原が映子の所へ来るようになって…
気がついたらとんでもない事に…。」
「伯父さん。お母さんは覚えてないの。だから私達も忘れましょう。」
「そうだったね…映子は大金を騙し取られた事も忘れちゃったんだから。」
島谷の伯父が妹の受けた被害を思い、深いため息をついた。
辛さを吐き出すような言葉は、一花の胸に突き刺さっていた。
『大金を騙し取った叔父の力を借りて、私は月々のお金を手に入れてるんだ。』