宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
「すまない、何も知らなかったんだ。」
「すまないって…。何の事?」
「君の家族の事だ。」
後から抱きしめている陸にもわかる程、大きく一花の身体が跳ねた。
「な、何を言ってるのかわからないわ!」
「隠すな。お母さんの事も知ってる。」
「調べたのね…。」
「ああ、結婚する前は何も知らなかったから。」
「何で…今さら…。」
「君の事が心配だったからだ。」
「心配?」
「そうだ。突然、俺の側から飛び出して島から出て行ったんだぞ、お前。」
「…ごめんなさい…。」
「もう、俺には何も隠すな。お母さんの病気とか金の心配とか…。」
いつも憮然としている陸が、やけに優しく話しかけてくれる。
一花の身体をずっと後ろから抱きしめたまま、離れない。
「俺がいる。何も心配しなくていいんだ。」
陸の体温を全身で感じているうち、一花はポロポロと涙を溢していた。
いつ以来だろう。
彼女の事を心配して誰かが抱きしめてくれたのは…。