宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
「泣く程、辛いのか…。」
一花をそっと振り向かせると、陸はその涙を指先で拭いながら囁いた。
「俺が、その辛さを忘れさせてやる。」
口づけされた。
あの東京のホテルの激しいキスとは違っていた。
優しいキスだ。
額に、瞼に、頬に、耳朶に、唇に…。
気が遠くなるほどの時間を掛けて、陸はキスを続けた。
「あ…。」
一花が両腕でギュッと陸を抱きしめたのが合図になって、彼はベッドに誘った。
「いいか?」
怖い。でも、この先が知りたい。
一花はコクリと頷いてた。
それは、思っていた以上に一花を虜にした。
彼に愛されている身体はどこもかしこも熱を持ち、蕩けて行きそうだった。
恥ずかしさを忘れる程、一花は夢中で彼の愛撫を受けていた。
ただ…。不慣れな彼女にもわかったのは、陸が最後まではしなかったという事だ。
これほど情熱的に一花の身体を開いているというのに、
陸は決して一花を散らす事はしなかった。
『どうしてなの…。』
湧きおこる疑問を抱えたまま、一花は眠りに落ちた。