キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
そうして、陸翔と茉緒が新しいマンションに引っ越した頃。

なぜか図ったように有川千穂との関係に頭を悩ますことになった。
今まで有川は大人しく業務以外で話すことはなかったのだが、有川商事の社長との会食で社長に付いて行った時のこと。
有川社長の隣に当然のように娘の千穂が座っているのを見て怪訝に思ったのが始まり。
仕事の話などほとんど出ない会食は完全にプライベートの雰囲気で疑惑は確信へと変わった。
ことさら俺と千穂の共通点を上げ喜ぶ有川社長と娘の千穂につい顔が引きつった。
「智成くんは学生の頃アメリカに留学してたそうだね、どこの大学かな?」
「はい、スタンフォード大学です」
「まあ、私もスタンフォード大学に短期留学していたことがあるんです」
同じですね! と満面の笑みで喜ぶ千穂は職場では見せないはしゃぎぶりだ。
留学時期は被っていなかったらしく同じキャンバスで出会いたかったですと上目遣いに言われて背筋がぞわっとした。
有川社長は有川社長で、「ふたりとも話が合いそうじゃないか、よかったな千穂、智成くんと大学の話ができて懐かしいだろう」なんて言って話を盛り上げようとする。 
これ、まるで見合いだな。
完全に嵌められたと思い隣を睨むがわが社長はどこ吹く風。
涼しい顔して酒を飲み有川社長に話しかけている。
油断した自分に舌打ちしそうになったが、頭の中ではこれからのことを考え、ここは上手く乗り越え社長には茉緒とのことを話しておかないといけないと思った。
なにを隠そう我がエカトルコーポレーションの社長、白石健一は母の兄で俺の伯父に当たる。
外見はおっとりとした紳士だが、とてつもなく頭が切れる人物で俺が尊敬するひとりでもある。
父とは同期で親友でもあり、父が俺を勉強のためにと伯父の許へ就職させるほど父との信頼は厚い。そんな伯父が味方になってくれたらこんな心強いことはない。
なにより、これ以上千穂とのことで煩わされたくはない。
見合いの件と茉緒のことは、自分の親を説得する前に、社長を味方につけておくのが得策と考えた。
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