キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
「伯父さんに伝えておきたいことがあるんです」
「なんだ?」
「今、付き合っている女性がいます」
「ほう……誰か訊いても?」
予想外だったのか片眉を上げた伯父は興味津々という顔で俺を見遣る。
どこの誰なんだと問答無用で答えさせようとしないところが伯父のいいところだ。おかげで冷静に話ができる。
味方に付いてもらうためにも信頼してもらうよう伯父には誤魔化さずありのままを話した方がいいだろう。
「八坂陸翔の妹で、茉緒といいます」
「八坂くんの……前に会社前で見かけた子だね?」
「ええ」
「あのときは確か、彼女は関係ないと言っていたな」
噓をついていたのか? とでも言うように視線が鋭くなる。
伯父は嘘をつく人間が嫌いだ、というのを忘れていた。
だが嘘はついていない。
あのときは本当に茉緒のことは関係なかった。
「あのときはまだ出会ったばかりで、付き合いだしたのは最近です」
「それで? どうするつもりだね」
納得してるのかしてないのか、淡々と先を促す伯父に気を引き締める。
「本気で茉緒との将来を考えています。だから見合いの件はこれからも断ります。会社としては有川商事との政略的な結婚も考えていたと思いますが、俺にはその気はありません」
真意を見抜くような目で見つめられ居心地の悪さを感じながらも、せめて味方にならなくてもこれ以上有川をけしかけないでくれと念を送る。
まだ付き合いたてで将来のことまで持ち掛けて浅はかだと言われかねないのは覚悟の上だ。
< 114 / 252 >

この作品をシェア

pagetop